1月12日の日報 恋愛相談

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

仕事場の若い女子から、「日報さん、ちょっと相談乗ってください!」と頼まれた日には、私だって緊張します。
しかも恋愛の相談というではありませんか。

私はこれまでの生涯において、人から相談されたことがほとんどありません。
私の友人たちは、なにかと相談ごとを頼まれているらしく、たまにSNS
「◯◯とサシ飲みなう、まぁいろいろあるけど頑張ってほしい」
的な、食い散らかした飲み屋のテーブルの写真をアップします。
それを見る度に、私は
「なぜ俺には相談しない?」
と般若の相になるのです。
「俺だってめっちゃアドバイスできるよ!?」

曰く、「伊藤は相談しづらい」「近付きがたい雰囲気」「ちゃんと答えてくれなさそう」「どうせ自分が一番なんでしょ」など、散々な印象をもたれていることがこれまでの調査で判明してはいます。
しかし、それは大きな誤解である。

私ほど日々日頃からドリカムの歌詞に耳を傾けて、恋愛の本質について想い巡らせている男もそうそうおるまいて。
「いつ何時、如何なる恋愛相談があっても、動じず冷静かつ的確なアドバイスをする準備は、とうにできておるわ」
しかし世間の莫迦どもはそれに気付かず、浅い思想しかもたぬ我が友人たちにチャラチャラと相談しては、これまた本質から程遠いアドバイスをもらって
「うんうん、やっぱそうだよね〜」
と浅い返事をしているのでしょう。
っかー、時間の無駄たい!

そんなところに、今回の後輩からの相談依頼。
「貴君、じつによく分かっているね」
お目が高い。
「よろしい、先輩に話してみたまへ」

だがしかし、
例えどんな相談だったとしても、色恋沙汰における最も信頼のあるアドバイスは万事共通、ただ一つしかない。
それは既に決まっているのであります。
「ドリカムを聴け」
もうこの一言に尽きる。
ドリカム聴いてくれ、歌詞を噛み締めてくれ。
そうすれば、自分が選ぶべき道は自ずと見えてくるさ……

逆に、それ以外の話を垂れるやつは恋愛のなにもわかっちゃいない。なんだか聞こえのよいゴタクを並べて相手の信頼を勝ち取り、あわよくば恋に悩めるうら若き乙女にヒッヒッヒーと手を出そうとしているのではないですか?
けしからん、ドリカムを聴け!

そんなわけで、仕事のあとにさくっと中華料理とビールをつまみながら、彼女の話を聞いて来たのでありました。
話を聞きながらも、私の意識は
「(どのタイミングで『ドリカムを聴け!』と、ズバっと言い放ってやろうか……)」
に一点集中です。
今まで誰からも相談されてこなかった故に、この名言をビシーッと言い切るシーンを夢見ては、何度も脳内シュミレーションを繰り返すなどして生きてきた。
その夢が、今宵ついに叶うのです。
「正直、後輩ちゃんの相談はどうでもよい!」

ところがどっこい
思いのほか、
後輩ちゃんの相談内容が、
ここじゃ書けないくらい、
ヘヴィなんですね。
これが。
予想の斜め上を突いてきたお悩みに、私はたじろぎ、うろたえ、狼狽し、
やっとのことで振り絞るように声を発したのでした。
「……安野モヨコ、読んだら?」

それ以外に送るべき言葉がみつからない。
安野作品の主人公たち特有の『七転び八起き女子パワー』をお手本にして、明日を強く生きていって欲しい……それだけが私の願い。

いやほんと、「ヤフー知恵袋にでも書いた方がいいんじゃないですか」レベルの悩み相談に、私のドリカム論は木っ端微塵です。

まさかの安野モヨコ推しに対する後輩ちゃんの「は?」みたいな、でもその後の「ですよね、帰ったら読み返します!」の、健気に先輩の威厳をとりもってくれる彼女の努力が余計に辛かった夜。

要は「誰かに話したかっただけ」なのか、後輩ちゃんも最後の方は
「よーし頑張るぞ!」
とすっかり立ち直っておりましたが、逆に私は、自分は関係ないことにも関らず聴かなきゃよかったレベルで精神的ダメージを受け、これ書いてる今もわりとドンヨリしております。

ドンヨリ……
それでは明日もよろしくお願いいたします……
昨今における若者の貞操観念は、一体どうなっとんじゃ……