4月30日の日報 セッションだよセッション

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

映画『セッション』を観て来ました。
アカデミー賞を穫るくらい好評だったと同時に、いろいろと批判も出て議論になっている作品ですが、私はこれは間違いなく傑作だと感じましたし、今年観た中で現在No.1です。

(ちょっとネタバレしますが)
理由は大きく2つありまして:

1.
要は、アタマおかしい異常者2人の物語で、実際にこういう人間がいたら間違いなく関わらない方がいいクソ人間が主人公ですね。
異常者が異常者に喧嘩の売り買いをする「だけ」の映画です。

こう書けば中身のないように見えますが、
演奏に限らず、
「憎もうが愛し合おうが、異常者は異常者としかつるめない」
という掛け合い「だけ」に焦点をあてた(その他の要素をバッサリ切り捨てた)この映画は、追求者=どうしようもない奴らの描写として極めて正解だと思います。
「ごちゃごちゃ言わずに黙って観ろ」
がかえって気持ち良かった。

そう思ってみると、観客の集中力を、切らさずに&的確に誘導できてたと思うのです。
映画としてよく出来てるな〜、と。

音楽人から出ている批評は、愛ゆえのものでしょうから理解もできますが、
「音楽はそんな乱暴なものではない」
という指摘も予め分かった上でこの映画は作られたような気がします。
(映画内の楽曲レベルが低い、という指摘はクソリプの類かと)


2.
そして、なにより終わり方が素晴らしかったのです。

スタッフロールに入った瞬間、思わず「YEAH!」と拍手してしまいました。(他にも2〜3人、手を叩いてました)
隣のお姉さんは怪訝な顔をしていましたが、素晴らしいジャズセッションを観た時と同じリアクションを、思わずとってしまうなんて!

アノ瞬間にズバッと映画を終わらせたデミアン・チャゼルに今すぐ会って、抱きしめて、「セッションだよセッション!」と謎に叫んでキスしたい気持ちでいっぱいです。


以上2点だけで私は大満足でございました。
重箱の隅をつつけば、観客が置いてけぼりな箇所もいくつかありましたが、それを補って余りあるズ太いコア部分だけで私はお腹いっぱいです。

GWですが、もしお時間あれば是非観てみてください。ジャズや音楽に詳しくなくても、充分楽しめますよ!


ちなみに、これを評価の対象にしてもいいのかわかりませんが、
原題は"Whiplash"、劇中にも登場する楽曲名だったのを、
邦題で『セッション』と名付けた日本の配給会社のセンスは実に絶妙です。

私はこれは『原題を越えた邦題』だと思いますし、そんなタイトルに出逢えるなんて生涯に何度あるか無いかだと感動しております。
ジャズならではのキーワードですし。

そして、この邦題を軸に登場人物の心理描写やストーリーを考えていくと、全てが見事に繋がっていくわけです。
「おお〜そういうことだわさ!」
この快感はすべて邦題のおかげですから、私は『セッション』と名付けた配給会社の人に今すぐ会って、抱きしめて、「セッションだよセッション!」と謎に叫んでキスしたい気持ちでいっぱいです。


※補足として、最後の最後に分かり合えたように見える2人も、きっと「その後」は別離するんだろうなと勝手に妄想しています。

※※フレッチャーが、教え子だったショーンの死を「車の事故で」と語っていたのは、自殺だったことを知ってて生徒に隠そうとしたのか、ショーンの遺族に真実を知らされてなかったのか、このどちらかで彼のキャラ立ち位置が180度変わりますから、その真相を……敢えて描かなかったのがまた憎らしい。
おかげで妄想が止まりません。