8月25日の日報 暗殺されかけた

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

夏休みが明けて今日から社会復帰でした。
社会復帰はとりわけ問題ないのですが、日報復帰の方がメンタル的に削られますね。

夏休み中は熱海近辺のビーチへ行きまして、私はカナヅチですから、浮き輪がないと死ぬので、平静を装いつつも必死に浮き輪に捕まってプカプカ浮いておりました。

そのビーチは海水の透明度が非常に高く、足がつかない深さでも底の砂だったり、浮いている自分の影、そして下を泳ぐ小魚などが見えるほどです。
天気も申し分ないほど快晴で、こりゃええわい、と水面に揺れていたのです。

ところが次の瞬間、
「!!」
ジクッ、といいましょうか、閃光のような痛みが右足に走ったのです。
クラゲが私の足を刺したのではなかろうか。
「あひゃあ!」
慌てて変な声を出しながら水中に目を凝らす私。

クラゲに刺される時の『突然過ぎてどこから攻撃されているかわからない』感覚、アレが怖い。
しかも、一発ではなく数発連続で叩き込まれるので、第2波を喰らう前に急いでクラゲの位置を発見→そいつから離れなくては、と考えました。

ところが、クラゲの姿が全く見えない。
刺される時になんとなく感じる気配もない。
「?」
一体今の痛みはなんだろうか、と不思議に思っていた時、視界の隅に、白と黒のしま模様の小さい物体がピューと泳ぎ去るのが見えました。

一見、熱帯魚みたいな魚です。
「まさか、アレ?」
白黒のしま模様はあっという間に見えなくなってしまいましたが、その後も何も起こらないので、原因はクラゲではないらしい。

うーん、一体なんだっただろう、とにかく気を取り直して浮き輪でプカプカ浮いt
「ビシーッ!」
「ぐはっ!?」
今度は背中に激痛が。

パニくる私の目の前を、またしても白黒のしま模様がスーっと横切るではないですか。
その時、
「俺は今、この魚に襲われている」
と確信したのです。

そして、
「ビシ!」
「ぎゃ!」
「バシ!」
「うへえ!」
と数発、しま模様野郎にいいように噛まれまくる私。
これが水中でなければ、俺のフットサルで鍛えたキックを縞模様に叩き喰らわせてやるところですが、いかんせん身体の自由が利かない。
「こいつぁ敵わん」
屈辱ではありましたが、私は縞模様野郎から逃げるように砂浜の方へ退散しはじめました。

ところが、浮き輪にすっぽり身体を入れている状態ですから、バシャバシャと必死でバタ足してもなかなか前に進まない。
「ヒー!」
想像してください、
水中の謎の魚に噛まれまくる、
逃げたいのにスピードが出ない、
その間、いつどこからまたヤツが襲って来るかわからない、
しかも、奴が嘲笑うかのようにピューっと姿を表しては消す……
なんかのパニック映画のワンシーンみたいです。
私はもう33歳ですけれど、オトナのプライドみたいなものは、その時太平洋の藻くずとなったのでした。
おっさん、浮き輪に入って一生懸命だ。

「こいつぁヤバいぜ!」
ちょいちょい噛まれながら必死に逃げ泳いでましたが、しかし今度はあることに気付くのです。
じつは、この浮き輪には妻も捕まっておりました。つまりすぐ隣に妻がおる。
そして、すぐ横で「海キレー! 魚泳いでるぞ!」と水中ゴーグルをつけて海底を眺めることで大興奮している小学生たちが、おる。
ところが妻は「?」というリアクションですし、
小学生たちも水中の魚に夢中です。
誰も私に起こっている異変に気付いていない。
私だけさっきからひとりで「うぎゃ!」と叫んでいて、ただのアレな人になっています。
「なんで! 俺だけ!」
ほんとうに、笑えるくらい私だけ噛まれています。
白黒の縞模様は、一体なにが目的で私ばかり噛むのでしょうか。

私「ほら! そこ! 白と黒の魚!」
妻「あ、ほんとだ」
私「ヤツが! 来る!」
妻「かわいい〜」
かわいくねぇよ! めっちゃ凶暴だよこいつ!

這々の体で砂浜へ上がった私の背中には、噛まれた跡がちょこちょこ残っていたという。
息を切らしながら、ヤツが潜む海を睨む。
「もう何がなんだかわからない、ただ、残酷なほど万人に平等だと思っていた自然界にも、不条理は存在したのだ」
海にはクラゲ以外にも敵がいる、
そいつは人を選ぶ、
選んだ獲物は逃さない。
それだけだ。

帰ってからググっても、該当する魚は見つけられず。
納得いきません、あの暗殺魚、来年は絶対倒したい。
もう夏も終わり。皆様も今年は海へ行くことはないと思われますが、来年は白と黒の縞模様に是非お気を付けください。

それでは明日もよろしくお願い致します。