12月5日の日報 音痴罪

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

晩ご飯を外で済ます時は、帰路の途中にあるカフェに寄ることが多いです。
北欧チックのお洒落で静かなカフェで、夜中まで空いているので重宝します。

今日も仕事帰りに立ち寄りました。
ちょっとゆったりした夜だったので、シチューを頼むついでについ白ワインを注文。
というよりも、ここに立ち寄る時は大概ゆったりしているので、最近はよくお酒……しかも飲み慣れていないワインを注文するのでした。
ゆったりしてる時って、大胆になりますからね!

そんな私を「ワイン好き」と受け取ったのか、今日は店員さんが
「いつもあまり仕入れない、珍しい白ワインがあるんです」
と、わざわざ紹介してくれました。
うむ、私はお酒が苦手なのでそれは勘違いですが、なんだか特別サービスを受けているようで気分良い。

イタリアのなんとか地方でとれる美味しい葡萄でできた、それこそ果物を齧ったかのようなフルーティな味わいを楽しめる……
そう説明してくれる店員さん(イケメン)も楽しそうで、嗚呼、この仕事を楽しんでいるなぁ、と見てるこちらもニコニコします。

だけれども。
グラスにワインをとくとくとついでくれるその間に、
私の束の間のほっこり感は、
やがて懺悔の念へと変わります。

イタリアのなんとか地方でとれる美味しい葡萄でできた、それこそ果物を齧ったかのようなフルーティな味わい。
を、
私は楽しめない。
だって、
コーラとペプシの違いや、
アクエリアスとポカリの違いや、
吉野家の牛丼と松屋の牛丼の違い
……などが分からない程、
私は圧倒的味音痴なのだから。

グラスにそっと顔を近づけると、ふわりと漂う葡萄の香りが鼻孔をつく(気がする)。
指でグラスを転がしてそっと接吻=KISSすれば、冷ややかな艶やかさが舌を包み込む(気がする)。
口のなかに広がる風味が、私をイタリアの田風景へと連れて行ってくれる(気がする)。
「これは、いいワインです(震え声)」
私はグラスをライトにかざし、後光をうけて静かに燃える情熱のワインにこう呟いた。
グラッツェ

「ま、どのワインを飲んでも同じ感想なんですけどw」
自分の味音痴を痛感している私は、最近グルメな体験をする度に、なんでも「美味い!」と感じてしまうこの体を呪います。
いや、ある意味で幸せかもしれません。
でも、なんだか損した気分なのです。

ごめんよ店員さん。
食後にお皿を片付けに来た際、
「いかがでしたか?」
と聞いてくれたね。
「美味しかったです」
本当に飲み易くて美味しかったんですが、
「美味しいと思うし、美味しいと思わざるを得ない」
という意味合いを多分に含みながらそう答える私は、
真実を知らない彼にひどい嘘をついている気分になり、
そのイタリアの太陽のように眩しい笑顔から、そっと顔をそらした。

それでは明日もよろしくお願いいたします。
ボジョレー!