8月6日の日報 ジャバウォックの森 の巻

お疲れ様です。伊藤です。
昨夜は帰宅したらドターンと寝てしまいました。最近疲れやすいのは、暑さのせいでしょうか。基本、屋内にいるにも関わらず……。

さて、
昨日は仕事のあと、小用で代々木(というより千駄ヶ谷)に自転車で向かいました。
そこでの用事を終わらせて、次の用事がある下北沢へ向かおうとすると、明治通りから原宿駅の前を通り、井の頭通りをまっすぐ行くことになります。

蒸し暑い夜、汗をかきかき自転車を漕いでいると、代々木公園の入り口の手前でアイホンが「アーイホン♪」と鳴り、下北沢での用事がキャンセルになったとの連絡が。
「あらそう、ほんじゃ家に帰ろうかね」
と自転車を漕ぎはじめた時、
私のすぐ横を、お洒落なお姉さんがシャーと追い越して、代々木公園の正門から中へと入っていきました。
すると、今度は原宿系なお兄さんがロードバイクを勢い良く駆って、これまた代々木公園へと吸い込まれていきます。
時刻は22時半。
こんな夜遅くに代々木公園がまだ開いていることも知りませんでしたが、そんな夜の公園に入り込んでいく人がいること自体が驚きでした。

すると、やはり興味が湧いくるものです。
夏の夜の広い公園を自転車で走ることは、案外気持ちのよいことなのかもしれない。ここは試しに、私も入ってみようではないか!
私は思い切って代々木公園へとハンドルを切ったのです。

「すんげー怖いんですけど!」
湿気がとてつもない夜だったので濃い霧が発生しており、10m先くらいしか見えません。
しかも、私が公園内に入ってからプツリと人の気配が途絶えた。さっきのお姉さんお兄さんを追いかけようにも、とっくにどこかへ走り去ってしまいました。

公園……というより、もはや森。
ここは東京なのか、ジャバウォックの森ではなかろうか。
誰もいない暗い森で、霧の中にぼうっと怪しい光を放つ街灯が余計に不気味です。
「あーもう、これはおばけ遭遇パティーン」
無駄に諦めムードを醸し出しながら、恐る恐る自転車を漕ぐ私の心中いくばかりか。

すると突然、
ちょっと先から
「ぎゃはは!」
という歓声が。
ビクッ!どころではない、ンブルァ!並に体をびくつかせた私であった。
一体なにごとかと思ったら、原っぱで若いギャル男&ギャルグループが花火をしているのです。
おぉ……どれだけ心細かったか、その時の私の安堵は筆舌に尽くし難い。思わず自転車のスピードを緩めて、満面の笑みで彼らを凝視してしまう私。
グループのなかの1人が私に気付き、
「なに見てんだテメェ」的なガンを飛ばしてきましたが、今の私に通用しない。
なぜなら私は今、君たちに出逢えた奇跡にマジ感謝!

少なくとも助けを求められる人間がいることが分かっただけでも収穫です。
心強いバックアップ(ギャル軍団)を得た私は、一気にルンルンモードに突入。
「夜の公園って、なんだか気持ちいい!」
軽快なリズムで自転車を進めます。

すると今度は、路上で大喧嘩している韓国人カップルに遭遇。
もの凄い剣幕で怒鳴り散らす女と、だんまりを決め込む男。
なにも、こんな暗い森の中で喧嘩しなくともいいのですが、しかしそんな2人の存在でさえ私には嬉しかった。
「ふたりが出逢えた奇跡に幸あれ、サランヘヨ!」
トゥインクルなウィンク☆をかまして2人の間を走り抜けた私。

その後も、モデルさんかと思われる美女(外国人)がひとりでランニングしているので、
「こんな夜遅くに危ない、私が伴走してあげましょう」
と紳士的に彼女のうしろを同じペースで走っていたら、もの凄え顔でこっちを振り返って威嚇されたので、おずおずと引き下がったりしているうちに、

道に迷いました。
完全に迷った。広い公園のなかのどこにいるのか、さっぱりわからん。
誤算だったのは、
街灯がついている通りとそうでない通りがあり、もちろん街灯のない通りは100%真っ暗なので怖くて走れるわけもなく、おのずと明るい通りを行かざるを得なかった点。
くねくね曲がる道を走るうちに、自分が東西南北のどちらを向いているのかわからなくなってしまいました。

モデルさんもどこかへ消えて、またひとりになってしまった私に、どっと降り掛かる恐怖心。
キョロキョロしてみると、どうやら私は公園の淵にいるらしく、少し先のフェンスの向こうに広い道路が見えたので、とりあえずそっちに向かってみました。

その後、あれやこれやと紆余曲折を得て、
私はついに広いバスの駐車場へと出たのであった。
「東京よ、私は帰ってきた!」
無事にこの世に帰還できた幸せに涙ぐむ私。

ダダっ広い駐車場には観光バスが数台止まっているのみだったので、私は無駄に駐車場を大きく回るように悠々と走っておりました。
すると、プリウスが一台、音もなくスゥーっと入って来て、これまた駐車場の影になっているところにスゥーっと止まりました。
「怪しい」
私の勘が叫びます。
「調査せよ!」

広い駐車場のなかを無駄にグルグル旋回しつづける私も充分に不審者でしたが、遠巻きから確認する限り、そのプリウスに乗る男と、助手席の女も極めて不審である。
ぐるぐるまわりながらこっちを凝視する私の存在に向こうは気付いて気付かずか、しばらくして遂にやりやがった。
「チュ〜」
て、てんめぇ!

「地球環境にやさしいエコカーの代表格として君臨するプリウス、その車に込められた開発者たちの優しさを不貞な行為で蹂躙するとは許せん、本田宗一郎も貴様らのラヴラヴチュッチュのために技術を磨いて世界を相手に奮闘してきたのではない! 今すぐそのチュッチュを止め、車を走らせて『このエンジン、すごい静かだねフフフ』と平穏な夜を過ごせよこの野郎!」

心の中で叫びながら、今度は私がスゥーっと駐車場から出ていきました。
「とはいえ、ふたりのお楽しみを邪魔するのは紳士ではないのである」
それに、プリウスTOYOTAの車でした。

その駐車場から出たあとも、自分が一体どこに出たのかが分からず、アイホンのMAPを頼りに代々木〜参宮橋界隈をうろうろ走り続け、帰宅するまでにさらに20分以上かかったのでした。

代々木公園は鬼門である。
それでは本日も宜しくお願いいたします。