9月10日の日報

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼致します。

今日の日報、というより先日の日報、というよりただのLIVEレポートみたいになってしまうのですが、土曜日に『東京JAZZ』というイベントに行ってきました。
http://www.tokyo-jazz.com/

3日間開催の中日、土曜日の昼の部のみを狙いすましての参加。
「一緒に行こうぜ!」と周囲を誘ってみたにも関わらず誰も捕まらなかったので、結局ひとりで乗り込むことになってしまいました。
ジャズフェスティバルということで、さぞ渋めのオトナ〜な客層になると予想される。そんなところに私のようなチビっこ枝豆野郎がひとりでノコノコやっていこうものなら、
「枝豆www」
「枝豆キタコレwww」
と、周囲の嘲笑の的になりゃしないかと恐れ戦き、一度は参加も諦めた私ですが、
しかし!
どーしても!
どーしても観たいアーティストが出演するのだ!
そこで、恥を忍んでB系代表として堂々と国際フォーラムに乗り込んで来たのであります。堂々と道に迷いながら。

その「どーしても観たいアーティスト」というのは2人おりまして、ひとりはベン・E・キング

ベン・E・キング」、と聞いてもピンと来ない方も多いかもしれません。
しかしアナタ、この曲を知らぬとは言わせませんぞ。

そうです、あの「ベンジョナイッ!」を、私、なんと生で聴いて参りました。
なにを隠そう、これは自慢である。
古今東西、全世界の思春期ボーイズに捧ぐレクイエムとして語り継がれる名曲を、本人の歌で聴いたとあっては伊藤家末代まで残る語り草。
他にも色々なヒット曲を持っているベンおじいちゃんですが、最後のこの曲のイントロが流れた時の私の興奮たるや、筆舌に尽くしがたい。鳥肌ゾワワワワーッ、でございます。
上のビデオに比べて今ではすっかりお年を召され、声も当時ほどは出なくなってはいるものの、もうこれは伝説の歌ですから、100m先で本人が歌っていること自体にとんでもない価値があると言えます。
決して忘れ得ぬ思い出となりました。
やっぱり行って良かった……。

休憩時間は、周囲のアカデミックな観客の視線をものともせず♪イルなスキルで昼寝キメる。そしていよいよ、最も「どーしても観たいアーティスト」の出番となりました。
その名は、バート・バカラック

…ってご存知でしょうか。
私が彼のことを知ったのは高校生の時。初めてエルビス・コステロのCDを買ったのがバート・バカラックとの共作で作られたアルバムでして、よく分からないまま手に取ったのがきっかけでした。

painted from memory

painted from memory

「なんだ、コステロだけじゃないのか、誰このおっちゃん?」
と、今では恐れ多いナメた態度で見ていたわけですが、そのアルバムが私が毎日聴き込んでしまうほどの名作だったが故に、ちょいと彼について調べてみてアラびっくり! 歴史的ソングライターであることが発覚。
彼自身は歌い手ではありませんが(たまに歌う)、しかし彼の作曲・プロデュースの手腕は人類国宝ものだったのです。
それこそ先程のベン・E・キングではありませんが、この曲々を知らぬとは言わせんぞ。

まさに古き良きアメリカの歴史とともにあった名曲たち。
これらがバカラックおじさまによって作られたわけでして、それはつまり、100m先でピアノ弾いてるおじいちゃんは音楽史に燦然と輝く巨星なわけです。

もちろん演奏はハイレベルで圧倒されますが、何より心打たれたのはバカラックおじさまの「歌」。
彼ももう80代半ばの高齢でして、歌おうとしても全然声が出ない状態なのです。だのに、彼は自分の歌う曲は未だに歌おうとする。音程なんてあったもんじゃないです、だのになぜかそれがとても「味」に聴こえます。

これは4年前のLIVEですが、この時点でも声はかすれてしまって若干見ていて辛くなるほどです。東京JAZZではもっと声が出ていなかった。でも、彼自身が奏でる旋律に乗ったその声のなんたる優しい響きか。
当日、この動画と同じ"Wives and Lovers"〜"Alfie"〜"A House is not a Home"という私が大好きな曲のメドレーを、ひとり大舞台の上で弾き語るバカラックおじさまを観て私は冗談抜きで号泣しました。あれもこれもひっくるめて、全てが美し過ぎて、勝手に泣けて来た。

ベンおじいちゃんもバカラックおじさまも、語弊を承知で言うなれば、実際に彼らを観ることが出来るのは恐らく今回が最後のような気がしないでもない。
現にバート・バカラックと共に大ヒット曲を生み出した作詞家ハル・デビッドが、奇しくも9月2日に91歳で逝去したばかりです。(バカラックおじさまも冒頭で彼のことに触れていた)
だからこそ、最後のチャンスになるかもしれない今回の来日に是が非でも観に行きたかったわけで、
そしてその希望が叶った時に、皮肉といいますか、
「また観たい、何度でも観たい」と思ってしまったのでした。
素晴らしい音楽なのだから当然です。

ライヴが終わってからもしばらく身体の中が優しい心持ちでいっぱいで、こんな音楽、そうそう滅多に出逢えるものではないですね。これを書いている今でもまだ余韻が残っているのですから。
歴史的存在を拝することができて、身に余る光栄でした。

ベンおじいちゃんもバカラックおじさまも、出来ることならまたお会いしたい。それがもちろん本心です。
あのしゃがれた歌で素敵な音楽を聴かせて欲しいです。

それでは明日も宜しくお願い致します。