8月10日の日報

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

今夜は神宮外苑の花火大会が開催され、私の仕事場のベランダから遠くに花火を見ることが出来た。
それこそ手のひらに乗っかりそうな小さい花火ではあったものの、逆にこの距離、この高さから俯瞰的に鑑賞するのは初体験だったので、迫力こそないものの、静かに舞う光の粒がとても新鮮に思えて楽しめたのであった。

同時に、すぐ隣には新宿のビル郡が連なっているので、日頃から
「このベランダから一望できる風景、これをいつの日か全て俺のモノにしてみせる…そう、全てだ」
と、ささやかな野望を滾らせている私からしてみれば、花火とセットになった摩天楼を睥睨しつつ
「夏の宝石を纏ったオマエ、今夜も綺麗さ」
と、強気なマドンナをどうしても落とせない小粋なプレイボーイ気分も満喫。
なるほどこんな花火の楽しみ方もあったのだ。

さて、その花火大会も30分程前に終了した。
ここからが問題である。
花火大会なのだ、デートとして楽しみに来たカップルが多かろう、そして彼らはこれから花火の高揚そのままに街へ繰り出すに違いない。
長い夜は始まったばかりである、「決戦は金曜日」と言わんばかりにここ東京で戦いの火蓋は切って落とされる。

あれですか、
浴衣ですか、
妖精の羽みたいな帯ですか、
お団子ヘアですか、
お団子ヘアだけど襟元を数本垂らしますか、
そうですか、そうですか。

禁断の惑星『カワユス』が衝突し地球が崩壊するレベルと同等の破壊力を持つ存在、それが浴衣ギャルたちである。
夏の魔法によって手に入れし覇王の鎧こと"YUKATA"を纏った彼女たちは、蝶のように舞い蜂のように街ですれ違うメンズのハートを焼き鳥よろしく串刺しにしていく。その様は、まさしく呂布の如し。

そんな浴衣ギャルが跋扈する週末の街……を想像しただけで、オフィスに独り残ってこの日報を今まさしく書いている私は、まるで正気を保つためにもこの日報を永遠に書き続けなくてはいけない程に理性が狂いそうである。
「浴衣と浴衣の隙間に埋もれたい!」

いや、まだそれだけなら良い。
真に許せぬはその浴衣ギャルのハートを逆に射止め、己の連れとして横に歩かせている野郎どもである。
「このお団子ヘアは、今宵俺のモノとなる運命(さだめ)」
何食わぬ顔でクールを気取りつつも、内心そう思って同じ電車に乗り合わせたコミケ帰りの童貞たちを卑下するのか、そうなのか!?
ええい貴様、悔しいが勝てません!

そんなこんなで、様々な想いを抱えてこの夏を向かえたメンズとギャルズが、湿気をはらんだ人生のスクランブル交差点を繰り広げること必至のハナキンである。
今夜は荒れるでぇ。

私は野郎4人でスタジオに籠ってダンスです…。
うるさい、それでは来週も宜しくお願い致します。

華の金曜にも関わらずこの日報を自宅で読んでいるあなたにはこの曲を贈る。

夏が逝くね、もう夜明けは近いよ。