7月26日の日報

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼致します。

WEB業界に属している方なら、"Path"というスマホアプリをご存知かもしれません。これは、俗にいうSNSの類い、言うなれば「Facebookみたいなもの」です。

https://path.com/

特徴として『近しい人とのみ繋がるSNS』というものがありまして、友人リストに加えられる数に制限があります(150人だっけな?)。
機能としてもFacebook的なものに加えて、「寝た/起きた」「なにを聴いてる」など近しい範囲の人だからこそ知られても構わない情報を共有することができます。
際限なくコネクションが広がっていくFacebookに疑心を抱く人々の間でこのクローズドなSNSシステムが人気らしく、ユーザーは世界で2000万人に達したとか。
SNS="Social Network Service"の"Social"の部分においては、定義付けには個人差があるでしょうから、こういった範囲的な部分で他サービスと差異をつけるアイデアもおもしろいですね。

また、アプリ自体のUI(デザイン面も含めて)についても、SNSの通念を保ちつつもオリジナリティがあると評判になっており、デザインの勉強になると多方面で紹介されていたりするものですから、これは気になるところ。
と、いうことで、
私も"Path"を始めてみました。フリーです。

ところが、です。
SNSなのですから、上述の"Social"の部分である「友達」と繋がるわけですが、その際に"Path"はこう訊いてきます。
『あなたのアドレス帳から家族や友人を探すため、Pathサーバーにあなたのアドレス帳を送信しますか?』

およよ、なんだかこの光景を見たことがありますよ?
そうです、"LINE"というSNSアプリです。
"LINE"は、一度アプリをインストールすると、どんどん自動で友人と繋がっていきます。
なぜなら、このアプリが個人のアドレス帳の情報をクロールし、同じ"LINE"をインストールしている人を探して来て勝手にリンクしてくれるからなのです。

この一見便利に思える機能は、しかし一時期「繋がりたくない人と繋がってしまう」ということで話題騒然となりました。
プライベートの場に仕事関係の人が混ざってしまったり、個人的に関係をこじらせてしまった人、昔の恋人……まぁ人それぞれでしょうが、そんな「微妙な関係」の人々とイヤでもコンタクトしてしまう。
ブロックするなり放っておくなり、繋がりを回避する策はあるものの、よくシステムを分かってない人は「え!?」と動揺してしまうそうです。

そんな賛否両論の友達検索システムを、"Path"が訊いてくるというではありませんか。
「クローズドなSNSじゃなかったのか!?」
私はそこまで「微妙な関係」の人がいるわけではない(そもそもアドレス帳に登録していない)ので、別に構わないといえば構わないのですが、なんだか"Path"の根本的なコンセプトから乖離していてなんだか不気味だ、ついつい「いいえ」を押してしまいます。

さて、そうして友達検索を拒否すると一体なにが起こるのか?

ガチでクローズドなSNSの完成です。

なぜなら私ひとりしかいないから。
ウォールを埋め尽くす「なにを聴いてる」「どこ行った」「こんな写真撮った」などの情報たち。
これ全部知ってる、だって私のことだもの。

なんということでしょうか、"Path"は
「近しい人とだけ繋がれるよ☆」
という甘い文句で人々を誘い込み、己をインストールさせたが最後、
「おまえのアドレス帳を俺によこすか、イヤなら永遠にひとりでSNSやってろ」
と、踏み絵を強要するまるでヤーさんのようなドイヒーな圧迫営業を仕掛けてくるのです!

いや、別にアドレス帳を調べられて勝手に他のPathユーザーにくっつけられるのは構わないのですが、相手に「は?」と怪訝に思われる可能性もなきにしろあらずです。
相手も申請を拒否するなりしてもらっていいですが、一体なんなんでしょう、「聞いていた話と違うではないか」感が非常に強い!
よって私は大いに疑念を抱いたのち、決して"Path"にアドレス帳を奪われまいと強く決心したのでした。

そして、延々とひとりSNSを楽しんでいます。
…いや、楽しんでいる、と書けば嘘になる。
能面のようなツラで自分の日々の行いを俯瞰的に眺めるのみ、そこに感情など一切生じない極めて不毛なSNSが誕生しております。

しかし、そんなことをFacebookに書いたらば、仲のいい先輩Aさんがそれを読み、
「俺もはじめたんです!」
と、Path友達を申請して来てくれました。
はじめは意地でも孤独を貫き、死してなお遺族に「最後までPathでは独りだった」とある種の尊厳を抱かせる所存ではありましたが、意外とあっさりAさんと繋がることを選んだ私は、今現在、『ふたりSNS』という、ひとりだろうがふたりだろうがたいして差がない孤独感を日々感じて悶絶する毎日。

想像してごらんなさい、"Path"アプリを立ち上げる度にAさんの私生活が手に取るように分かってしまうこのギリギリの罪悪感。
これか? これが"Path"の醍醐味なのか?

「アドレス帳を調べさせておくれ〜ヒヒヒ」
しつこく絡んでくる"Path"の悪魔の声にひたすら背を向けて、クローズドなSNSを楽しんでいますよ、みなさんもいかがですか?
WEBが普及した現代社会ならではの『孤独』の深淵に触れることができるのでオススメです。

それでは明日も宜しくお願い致します。