2月25日の日報 敗北など存在しえないのだ の巻

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

先週から「HTC Butterflyが使いづらい」とブーブー文句を言っておりまして、ついには写真をMacに取り込むアプリがろくに動かん事態にでくわし、「こりゃかなわん」とHTCのカスタマーサポートセンター、イマドキ風に略してカスサポ!にメールで問い合わせました。

「おいこらわれ、お前んとこのバタフライちゃんがロクに動きゃせんのじゃ、こんな状態で世に発売しおってからにオマエんとこの社長はいったいどういう神経しとんのじゃ責任者ださんかい」
もちろんそんな言葉遣いはいたしません。
いたしませんが、しかし多少なりともバタフライちゃんにイライラさせられているのを敢えて滲み出させる文体でメールを送ったのでした。
器の小ささではそんじょそこらの若造には負けはせんよ。

すると、数時間のうちに返事が来まして、
カスサポ!の担当、Iさん曰く
「かくかくしかじかこういうわけでございますから、下記の3つの対処法を試していただけませんでしょうか」
「んじゃこりゃわれ、こない簡単な方法で解決できるんならハナから相談したりせえへんぞ。3つの対処法を試せだぁ、もっとマシで的確な方法教えんかいワレ」
なにわの繁華街で、もしものトラブルに巻き込まれた際にも相手にナメられないようにと、今まで幾度となくシュミレーションを重ねて来た私のド根性トークを、Macの画面の前で無言で披露しているその姿は、
アゴが疲れちゃってなんだか違和感あるわ〜あわあわあわ」
かくもあらん。

とりあえず、3つの対処法のはじめのひとつ、
「もう一度アプリをダウンロード、インストールしてください」
っくー! こんな初歩中の初歩的な解決策、馬鹿馬鹿し過ぎて試す気にもらなんわ〜、とあわあわしながらアプリを再インストールしてみたらあっさり直ったもんですから、その次の瞬間にはGoogleで仕事場の近くに懺悔できる教会がないかどうか検索する私がいました。
まぁ実際、道路一本隔てたところに懺悔できそうな教会的な建物があるのですが、そもそも人生においてちゃんとした懺悔をしたことなどなく、三十路を過ぎて鮮烈な懺悔デビューを果たそうにも、作法もルールもなにもしらない、まさに「オシャレな服を着ていく服がない」的な、どうしよう困ったな状態に陥った私は、とりあえず担当Iさんに返事を書きました。

「教えていただいた方法で直りました。ありがとうございました」

1〜3のどの対処法で直ったか、書かない。
ここに私の最後のプライドが見え隠れしている。
まさか1番目の方法でいきなり直っちゃったなんて相手に知れようものなら、あのプンスカした文体だけに余計に恥ずかしい。
ここはひとつ、このままツンツンした態度を装って逃げ切ろう。
そうだ、3番目の方法が何だったか、メールすらまともに読んでいないけれど、きっとスンゲー回りくどい方法だったに違いない、そのスンゲー回りくどい方法をやってやった、直してやったんだからね、わかる?
「引っ込みがつかなくなった」
沢尻エリカの気持ちが今なら痛いほどわかります。

なんだかひとりで自爆したかのような、絶妙な敗北感に悶絶していますと、
なんと、そのIさんからメールが!

「直ったようでよかったです。もしまたご不明な点がありましたら、いつでもお問い合わせくださいね」

俺は泣いた。泣いたよ。
このコンクリートジャングルに咲いた一輪のタンポポだよ。
こんな俺みたいなあわあわ野郎だってのに、ここまで優しい声をかけてくれるなんて、俺が莫迦だったよ。
仕事場の同僚たちに泣いているところを見られまいと俯いていた私ですが、しばらくしたら鼻をすすりつつ顔をあげ、Macの画面に映る純真のまばゆいメールに真剣な面持ちで対峙し、言葉なき言葉で謝辞を投げかけました。

「いやね、俺ね、ほんとうはAndroid派なんですよ? あ、その目、信じてないでしょ〜もう! クソAppleのクソカスタマーサポートに満足してる客なんていないっすよ。ジョブスがなんだっつーの! ちょ〜っと売れたからってイイ気になりやがってさ。
それに比べてお兄さん! いや〜、あんたはカスサポの鏡だね。もうね、俺が言うんだから間違いない、ドーンと胸張っちゃってよ。そんなに人に気を遣ってあげれるなんて、イエスの生まれ変わりとしか思えない。オーイ! オーイみんな! ここにイエス再臨だぞー! ってね、あはは。集まれー! ってね。
もうね、俺は感動して涙ポロポロ塩分不足。なんだってまぁイチ顧客からの解決しましたメールにいちいち優しさを覆い被せてくるかね、このミスターテンダネス! やさしいが服着て歩いてるようなもんさね。
こんなやさしい人なんだから周りが放っておくわけないわさ。え? どうなの、コレ(小指)は? え? いない? ははは、待って待ってちょっと待ってよ、そんなわけないでしょー。いや〜‥‥‥‥ないでしょー。
俺がオンナだったらね、あんたのメールにね、こう返すからね。
Iさん、お返事ありがとうございます! 私、このアプリが使えなければ一生スマホの画像をMacに取り込めなかった! おかげでスマホライフをエンジョイできそうです! そこでお礼といってはなんですが、私の写真を添付します! どうぞ受け取ってください! ウッフン!
とか言っちゃってね、胸の谷間だよ、強調しちゃってさ。携帯の番号書いたポストイット、挟んじゃうわけ。クヒヒヒ、あ、やべヨダレでた。
って俺がヨダレ垂らしてどうすんの! お兄さん、ひょっとしてその優しいメールで、上等のカワイコちゃん、釣っちゃってんじゃナイーノ!
モテテ・ルンデ・ナイーノ!」

魂みたいなものは向こうに置いてきた男、伊藤日報。
彼が誇る千枚の舌がつくのは希望の未来か、偽りの過去か!

それでは明日も宜しくお願いいたします。