3月13日の日報 その右手を

お疲れ様です。伊藤です。
昨日から今日のこの時間まで日報を書く時間が全くとれませんでしたので、遅れて提出いたします。

この日は、朝から夜まで撮影スタジオにてアートディレクションを行なっていました。
「こんな写真をお願いします」
と、現場の皆さんに指示し、仕上がりをチェックして可否を決定する……簡単そうに思えてなかなか疲れる作業でした。

しかし、プロのカメラマン、プロのヘアメイクさん、プロのモデルさん達によってつくられた作品のクオリティは素晴らしく、始まるまでは不安で気が重かった私も
「バッチリです!」
「いいッスね!」
「これヤバいっす!」
「伊藤日報読んでね!」
快哉をあげまくることで小者っぷりを遺憾なく発揮できました。

途中、一箇所だけ、モデルさんの髪型で「ポニーテールの位置」が気になって仕方がなく、それこそ10回弱ヘアメイクさんにやり直してもらいました。
「こう、結び目の位置を少しあっちへ……」
「垂らした側の髪と首の間に5mmくらい隙間を……」
あまりに私が五月蝿くリクエストするので、ヘアメイクさんとモデルさんも少し引き気味でしたね。
私も要望を伝えながら内心で
「俺、なんでこんなに必死なんだろう」
と謎でした。
しかし気になるものはしょうがない。
この日でもっともアートディレクターらしいことをした一場面、それはポニーテールであった。

私の人生を賭けたポニーテール大作戦の甲斐もあり、撮影も無事終了。
終始和やかに進んだ現場で、最後には皆で談笑もできるムードに。
冒頭にも書いた様に、前日まで心配で緊張していた私も、その安心からテンションが上がっておりました。
あまりにテンションあがったせいで、
モデルさんが先に帰るのでエレベーターまで見送りに行った際、「ありがとうございました〜」と言いながら、

つい握手しようと手を差し伸べてしまった。

その瞬間、すぐさま「やっちまった」と焦りました。
『出会い頭や別れ際にガッチリ握手』、それはヒップがホップでもっこりなB-BOY達の心優しきストリートマナーであり、週末のナイトクラブで無数に見られる熱い友情の証である。
しかし、市井の人々の暮らしで決して浸透した習慣ではないことを、テンションMAXのせいでついつい忘れて、うっかり握手しようとしまったのである。

数年前、秋葉原メイド喫茶でファンだったメイドさんと500円払って一緒にチェキを撮ってもらった際、私の純粋無垢なファン感情がMAXまで高まり、
「メ、メイド頑張ってくださいブログも読んでます!」
と、これまたヒップホップなBマナーに乗っ取り握手を求めたら、
「あー、うち握手禁止なんだよね」
と、実に可愛らしい笑顔で、しかしサハラ砂漠の砂並にさらっとした受け答えでスルーされた時の、あの宙に固定されたままの私の右手。
あの日の恐怖が、今鮮明に蘇る非常に死にたい!!

……と思ったが、
モデルさんは私の右手に気付くこともなく内側から「閉める」ボタンを押し、エレベーターの扉がレスポンスよくス〜っと閉まったのです。
「危ね〜!!」
ギリギリのところで
「ごめんなさい、握手はちょっと……」
を回避できた私の右手は、汗でギットギトでした。

それでは本日もよろしくお願い致します。