1月15日の日報 映画評:鑑定士と顔のない依頼人
お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。
今日のできごとではないのですが、先週末に映画を観てきました。
『鑑定士と顔のない依頼人』
名作として名高い『ニューシネマパラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレが監督を務め、さらに同作で音楽を担当したエンニオ・モリコーネと再びタッグを組む……という話題の映画です。
『ニューシネマ〜』は私も大好きな作品ですし、サントラも今でもよく聴く名盤ですから、この巨匠×巨匠な組み合わせに私は「む、むふー!」と超興奮。
しかも主演のジェフリー・ラッシュは、これまた私の好きな映画『シャイン』でも主人公を演じた役者さんで、こうもあれこれ出揃うと、「もはや1月の時点で2014年ナンバー1は決まったな……」と、観る前から期待に胸躍らせておりました。
1.
観た感想をいいますと、「とても静かで綺麗な映画だな」という感じです。
2014年一発目に観た映画なので、当然現在は今年ナンバー1なのですが、このまま首位を守り切れるかどうかというと、ちょっと怪しいかな?
でも、観終わってから数日経つ今でも、余韻がとっても残っているのです。観終わった後に観客にいろいろと考えさせる余地を残す感じが、トルナトーレ節だな〜、と。
「おもしろい」ではなく、「良い」映画だ、と素直に思います。
最後、すべての真相に主人公が出会う瞬間の、ジェフリー・ラッシュの演技は素晴らしかった……。役者の演技で鳥肌立つのはなかなか無いです。
みんなに「絶対観た方がいいよ!」と肩を叩いてまわる程では無いのですが、私はDVDでもいいのでもう一回観たいと思っています。
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ここからは若干ネタバレな内容を含みます
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2.
この映画自体の批評ではないのですが、今回どうしても気になったことがあります。
日本での配給会社による『鑑定士と〜』の売り出し方は、
「ミステリアスな謎が仕掛けられており、最後に衝撃のラストが待っている」
といった内容のものでした。(宣伝文句、評論家レビューなど)
なので、
私もそれを意識して映画へ入り込んでいくのですが、
結果を言いますと、全っっっっ然衝撃的ではなかった。
というか、バレバレですやん。
「まさかな〜、え、まさか? まさか? ……のまさかwww」
と、予想がドンピシャ当たり過ぎてしまった。
ただ、それだけでこの映画を駄作と決めつけるのかというと、そうでも無いのです。
エンディングを眺めながら
「そもそも、この映画は『そういう映画』ではないのでは」と私は思いました。
この映画は、
芸術品の真贋を見極めることで一流の名を欲しいがままにしてきた鑑定士が、生涯で唯一見抜けなかった『にせもの』、それは……
という映画であると。
ミステリアスな雰囲気は全編に漂うものの、ラストシーンで裏切られる快感を求めることが、そもそも間違いではなかったか。
帰ってからインターネッツで他の方のレビューなど調べてみて、「結末が凄かった!」という意見も結構見受けるので、人それぞれの受け止め方があるのでしょう。
でも、私はどうしても「この宣伝方針は、ミスディレクションではなかったか」と釈然としません。
3.
邦題は『鑑定士と顔のない依頼人』ですが、依頼人は割と早い段階でその顔を見せます。(見せる、というか判明する)
その時点で「あれ?」と拍子抜けするのでした。
原題(洋題)は『THE BEST OFFER』。
この言葉を、主人公の鑑定士は劇中で何度か口にします。
そこに日本語訳として「本日最上の出品物」(確かそんな感じ)という言葉が割り当てられてましたが、すべての謎が明らかになった後に、この原題の意味がボディブローのように効いてくるのです。
「THE BEST OFFER、あぁ、そういうことだったのか……」
『鑑定士と顔のない依頼人』も、きっと頭を捻って考えたと思うのですが、ミステリー要素を強調し過ぎたんじゃないかしらん。
そして、日本の評論家たちも、なぜかミステリアスな部分を必要以上にさらってレビューしてしまったことで、観客に事前情報として妙な視点を与えてしまったのではないか……。
などと考えております。
無意識に、たらたらと。
まだ悶々としているのは、前述のとおり、映画とは違った側面(配給会社の方針)を含めた上でこの映画がそれだけ気になるからで、つまり素敵な作品であることの証拠なのでしょう。
サントラの発売が楽しみです。
それでは明日もよろしくお願いいたします。
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私は、『ニューシネマ〜』は、完全版ではなく初回公開時の方が好きです。