11月17日の日報 いつかボールを追いかけた日

お疲れ様です。伊藤です。
本日は出勤しましたので、日報を提出いたします。

「汗をかく、健康的スポーツの趣味をもちたい!」
そうのたまっていたら、同じ職場の小椋氏が古い知り合いと一緒に作ったというフットサルチームの練習に連れていってくれたのでした。

1.
この日報でも何度か書いていますが、
私の運動神経の無さは凄まじく、やってる本人(=伊藤)が真剣になればなるほどその滑稽さは際立ち、見ている者も
「なんだアイツw」
とケラケラと笑わっていたのが、やがて
「うわ……(なんか可哀想)」
という憐憫の情へとかわり、しかし最後には
「おい誰だよ伊藤呼んだのフザけんな」
と責任者を追求する事態にまで発展。

結局、コート内で情熱をもってスポーツに打ち込む(しかし全く出来ていない)伊藤をよそに、コート外では究極に気まずい空気になるのが常です。

そんな私がフットサルに挑戦するというのだから、これはちょっとした事件である。
小椋氏は
「昔やってた人もいるけど、ほとんどは初心者だから」
と言っていましたが、私は不安で不安で震え、泣いて当日(昨日)を迎えました。
「スポーツやりたいとは言ったものの、どうせ恥をかくなら大人しく家で日報でも書いてればよかった……」


2.
登校初日の転校生の様におずおずしながら訪れた練習場で、しかしチームの皆さんは
「初めてでも大丈夫ですよ!」
と温かいムードで出迎えてくれました。
私は内心ホッとしつつも、同時に
「その笑顔が、30分後には引きつってるかもしれませんよ、なんせ私は全神経を集中させてもリフティング2回。ククク……」
と卑屈になっておりました。

クククと笑えるだけまだ余裕があったのかもしれません、その直後に私は衝撃の事実を知ります。
なんと、各自で柔軟した後にちょっとパス回しをしたら、いきなりゲームをすると言うではありませんか。
これは大誤算である。

予想では、まず初心者向けに丁寧な指導があり、最後のまとめとしてちょっとだけゲーム……というものだっただけに大いにビビりました。
「え、もうっスか!」

サッカーのルールは、TVで観て大体わかっていましたが、フットサル独自のそれについては全くの無知。
人数が5人ということですが、自分はどこで何をすればいいかもわからない。
パス回しの時点で何度か「思いっきりすかし蹴り」を披露して周囲の笑顔ゲージを多分に削っていたこともあり、ゲームが始まってコートに立った時の私の緊張感たるや筆舌に尽くし難い。


3.
しかし、この日の私にはひとつの策があった。

それは、オシム氏が監督に就任していた当時の日本代表にヒントを得たものです。
「走る」をキーワードにしたオシム流サッカーを観て、私は運動音痴ながらに「うんうん、走るのが大事なんだよね〜」と偉そうに納得していたものでした。

そう、まずは走る。
スポーツは苦手でも情熱だけなら負けていない。
チームの勝利に貢献する真摯なアティチュードをアピールし、俺の存在を認めてもらうのが最初にやるべきことなんだ!

その持論には、実は後ろ盾もあります。
ここ数年、周りから
「伊藤さんって、長友に似てるよね〜」
と言われることがちょいちょいあり、
「え〜、そんなことないですよ〜」
と謙遜しつつも、次の日から思いっきりヒゲなど生やしていました。

そう言われると意識するなという方が無理な話でして、
「もし俺がサッカーをやることがあれば、長友のように走りに走って走りまくることで相手を翻弄し、且つアグレッシヴなプレーで点も穫りにいき、『顔も似てれば動きも似てる!』と周囲に言わしめてやるぜ……」
と、
サッカーする予定もないくせに……否、サッカーする予定が無いからこそほくそ笑んでいたのです。

しかし時は来た。
この日、フットサルコートに立った私は、猪突猛進を絵に描いたような激しいプレーで、チームのみんなを驚かせる気満々でした。
「こいつは、スゲぇ新人が入って来たぜ……」
と。
オシムが最後まで描けなかった夢を、あいつが叶えてくれるのかもな……」
と。


4.
1ゲーム7分という設定でしたが、3分経過した辺りで何度「ちょっとすいません、足首が」と嘘をついてコートの外に出ようと思ったことでしょう。

試合開始直後から長友を彷彿とさせるマジダッシュをしたせいで、「心臓が破れる」という表現がぴったりなくらい胸の鼓動が高鳴りまくり、
「俺は(ハァハァ)こんなところで(ハァハァ)死ぬのか?」
と、右手で左胸を抑えながら膝をついてました。瀕死です。

その割にはチームの勝利に貢献しているとは到底言えず、周りのメンバーも
「こいつはさっきから一人でなにをドタドタ走ってるんだ?」
と、混じりっ気ナシ100%ピュアな疑問を抱いているようでした。
「長友だよ、NA・GA・TO・MO!」
誰か分かってくれよ、俺の気持ち。

しかも、パスミスで転がっていくボールを、自慢の長友走りで追いかけるぜ! と風になったつもりが、その隣を疾風の如きスピードで追い越していく敵チーム。
「俺の脚力が負けたお!?」
いや、別にショックでもなんでもなく、むしろそれが真っ当な結果だと理解はしているのですが、しかし長友にもなれないとわかった今、このコート上での私の存在意義を、一体どこに見いだせというのでしょうか。

しかも、後半になってくると己の意識とは関係なしに膝が「カクン」と抜けます。
我が長友マインドに身体がついてこれていない。

自分の運動音痴スキルを最後に披露したのはいつでしょうか、数年前にボウリングで「44」のスコアを出した時かな?
スポーツとは縁のない日々を送るうちに、我が身体能力の致命的欠陥のことをすっかり忘れていたようです。
私は、やはり私以外の何者でもなかったのだ。


5.
そんなゲームの最中、私が1点を決めたのをミラクルと
呼ばずになんとする。

「決めた」と書けば見栄えはいいですが、その実

なんかゴール前で皆でもみくちゃになってる

とりあえず後ろから長友走りで突入してみる

どさくさに紛れて、足と足の間に自分の足を突っ込んで『ていっ! ていっ!』とめちゃくちゃボール蹴りまくる

足がこつんと当たって、ボールがコロコロとゴールに入る

GOOOOOOAL!!

というものでした。

しかしあまりにも穏やかな決まり方故に、
ルール上でも正当なゴールとはいえ、
なんだか「今のはゴールとは認めない」と敵側に抗議されたら、「やっぱそうですよねwww、じゃ今のはナシってことで。へへへ」となってしまうくらいのウサギちゃんゴールでした。

しかし、驚くことに、ゴール直後にメンバーが「うえーい!」とハイタッチを求めて来てくれたのです。
この瞬間、32年間の運動音痴人生に一筋の光が射した気持ちでした。
「こんな俺でも、認めてくれるんですか!?」
諦めなければ、いつかきっと夢は叶う。
そんな大事なことを気付かせてくれたんだ……

……フットサルで点を入れることが人生最大の夢かと言われれば疑問は残りますが、それはさておき、このウサギちゃんゴールは、我が伊藤家に末代まで語り継がれることでしょう。


6.
ゲームも合計6〜7回くらい行ない、どれもダメダメなプレーではあったものの、とにかく最後までやり切ることができました。

下手は下手なりに、自分にできることを精一杯やることの大事さを実感。
なので、個人的には「良し」とします。

チームの皆さんにも、
「(長友だ)」
「(あいつ、長友みたいだったな)」
「(長友……)」
と好印象を与えられた手応えがあります。

そして、なにより大量の汗。
身体が痒くなるほど血行もよくなっているのが分かります。
当初の目的(汗をかく健康的な休日)をたった2時間で達成できるとは。すげぇや、フットサル!

そんなわけで、私のフットサルデビューは素敵な思い出となったのでした。


7.
そして今日ですが、
朝に目が覚めて布団から出ようとしても、
下半身の筋肉痛がヒド過ぎて身体が動かないではありませんか。
「これは生活に支障をきたすレベルである、とりあえず湿布を貼ろうか」
と、痛いところ全部に貼ってみたら、まるで『妖怪・湿布男』みたいになってしまいました。

また、
むしろこっちの方が問題なのですが、
股関節がとりわけ痛むので、太腿の付け根にも湿布を貼ってみたのですが、さっきから男のコの大事なところがやたらスースーしており、
「これは病みつきになりそうだ」
と、新しい世界を垣間見ております。

よく見ずに買った湿布のパッケージには、
『高含水基剤で冷却感UP!」
と書いてありました。

それでは明日もよろしくお願い致します。

フットサルクリニック―「止める」「蹴る」の技術を極めて確実にうまくなる!

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