10月30日の日報 - 伊藤日報

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

今から数年前、私は京都のとある会社に就職し、東京からノコノコ出ていきました。
職場のすぐ近くに借りたマンションに到着したのは、仕事が始まる2〜3日前。
就業日までの間、家具を探す＆観光する以外は何もすることが無かった私は、あまりに退屈だったのでついつい「レンタルDVD」なるものに手を出してしまいました。

そう、私は『レンタルを全くしない男』として巷ではちょっとした有名人で、
音楽ならCDを購入し、
映画なら映画館へ観に行くことしかしない、
欧米人もワーオ！なラストサムライなのです。

「なぜレンタルしないのか」と理由を訊かれても、特に見当たらないので答えるのが難しい。
う〜ん、
強いて言うなら
「息を吸ったら、息を吐くだろ？
レンタルしたら、返すわけだ。
だが俺は、こんな薄っぺらい銀の円盤をレンタル屋まで返しに行くために、わざわざ服を着て、自転車を漕ぎ、コンビニに寄り道してファミ通を立ち読みしなきゃいけないことが非常に億劫だ。
吸った息を吐かなければ人は死ぬが、レンタルDVDを返しに行くくらないなら、俺は死んだ方がマシってわけ」
でしょうか。

さて、
そんな自然の摂理に反抗する程の壮大なパンク魂さえいとも簡単に捨て去るくらい究極の暇に悩まされた私が、
それこそ何年ぶりであろうか、縁のない人生を送って来たはずのレンタル屋さんへおずおずと赴いて、
これまた数年ぶりに手にしたレンタルDVDとは、
『ゴッドファーザー3部作』でした。

京都に移って2日目の夜でしたか。
ほとんど物を持たずにやってきた私の部屋には寝袋とiMacしかなく、そんな侘しい部屋で電気を消して、カンチューハイと割けるチーズをちびちび味わいながら『ゴッドファーザー』を一気に駆け抜けた私が、
いきなりホームシックになったことは想像に難くない。

そんな話はどうでもいい。

時は流れて、先週の土曜日。
「京都がシチリアになった夜」以来、足を運ぶことのなかったレンタル屋にて、DVDを吟味する私の姿がありました。

何故！？
WHY 私がプライドをへし折って再びレンタルDVDを借りようとしているのか？

それは、
秋だし、ドスの効いた発声を練習したいな〜
↓
お、なにやら『アウトレイジ　ビヨンド』って映画が役に立ちそうだなコノ野郎！
↓
しかし、この映画は前作の続きらしい
↓
前作を知っておいた方が楽しめるに違いない
↓
あら、今日に限って時間が空いている、よし前作のDVDを観て予習しよう！

…というわけなのです。

しかし、私の手には『アウトレイジ』のDVDが既に握られているものの、視線は陳列棚に釘付け。
店内をうろつきまわったまま、一向にレジへ向かおうとしません。

一体どうしたことか？
そうだった、
私がレンタル屋さんに行かない理由が、
もう1つあったのだ。

それは、
「ハマるのが怖い」
という理由である。

豊富なラインナップがズラ〜っと並ぶ店内にいると、
「アレも観たい、コレも観たい！」
という無限の欲求に駆られてしまいます。
我慢に我慢を重ねたにも関わらず、しかしついに誘惑に屈してしまい、
「芸術の秋なのだ！（牧瀬里穂なのだ）」
と己のプライドを嘘の蝋で塗り固め、当初の目的であった作品以外にも手をつけたはいいものの、てんこ盛りのDVDを家に持ち帰った挙げ句、それらを全て鑑賞できる時間を捻出できずに結局ほとんどを観ないまま返却する
↓
お金の無駄だし、そもそも「観たかったのに…」という悔いだけ残ってしまい、精神衛生上とてもよくない結果になってしまう。

そう、レンタル屋というのは私にとって
悪魔のラビリンスなのです！
デビルズ・ラビリンス・アタック！

しかし私も老いた。
すっかり平和ボケしてしまった私は、無意識にうっかりレンタル屋に足を踏み入れてしまい、悪魔の迷宮にガッツリはまってしまったのです。

手にした『アウトレイジ』のことなぞすっかり忘れて
『エイリアン』……『リーサル・ウェポン』……『未来世紀ブラジル』……『キャプテンアメリカ』……『パトレイバー劇場版』……
宝石がこんなにいっぱい！
そんな幻覚に騙されて、ひたすらパッケージを手にしては裏面を読み、
「これも観たいなぁ！」
と店に響き渡るほどの快哉をあげ続ける私。
こんな心の弱い男に、
数年ぶりのラインナップは刺激が強過ぎるのだ！（牧瀬里穂なのだ）