9月14日の日報

お疲れ様です。伊藤です。
1日遅いですが本日がこれにて失礼致します。

巷では昨今稀に見るゾンビブーム。
映画からドラマ、マンガまでありとあらゆるストーリーが「ゾンビっ気」もしくはホラー的なアイデアを基点とし、恐ろしいクリーチャーを相手にサバイヴするスリリングな展開がホットにエキサイトしまくっております。

原則、怖いものが大嫌いな私からしてみればそれは大いに迷惑な話でして、TVCMや書店のポップなどでチラチラとおぞましいゾンビたちが半ば強制的に目に入ってしまう。
ホラーに震える気持ちが鎮まったと思えば、そんなきっかけでまた怖いのがぶり返す…の無限ループ。いくらブームとはいえ、皆が皆ゾンビ好きかといえばそんなワケがない!
(私はゾンビに限らず怪談なども、それこそ死ぬ程嫌いです)

ところが私の周囲に限って見てみると、このゾンビブーム、男子より女子の方が盛り上がっているようでして、以前ならゾンビと知るや否や
「キャ、怖い〜」
と涙目で抱きついて来た可憐な乙女像は遥か昔の幻影。
現代をたくましく生きる女子にとってゾンビは立派なエンターテインメントとして受け入れられ、
「ゾンビ! おもしれー!!」
と意気揚々と楽しむ彼女たちに対し、
「キャ、怖い〜」
と涙目で抱きつきたくなるのはむしろ男子の方である、というパワーバランスの逆転が起こっているようです。

さて、そんなゾンビ大嫌いメンズである私は、日常においてもゾンビ対策を心掛けております。
「もし、今この瞬間にゾンビが私を襲って来たら!」
ちょっとでも暗かったり人気がない状況に出くわすと、私はホラーな妄想による恐怖心に体をぶるぶる震わせ、同時に「もしも」のことを考えてあらゆる回避策を全力で脳内計算する癖があります。

例えば、暗い夜道を自転車で走りながら
「もし、あの角からゾンビが飛び出して来たらその時オレは!」
俺は恐れるどころか逆にスピードをあげ自転車の前タイヤをウィリーによって持ち上げゾンビにウィリーアタックを喰らわすであろう。
同時にピョンと飛び降り、ゾンビと共に転倒した自転車を素早く拾い上げ一旦そこから脱出するのです。ゾンビは足が遅いので自転車なら追い付かれまい。
ただし、ここ近年は「走るゾンビ」とかいうルール違反が平然と行なわれているようでして、仮にこの相手が走って追いかけて来ようものなら、参ったな、とりあえず車道へおびき出してギリギリの駆け引きの末、車にゾンビを跳ねさせるしかあるまい。

……とか考える癖なのです。
皆さんはそんなこと、考えたりしませんか? 私だけだろうか。


さて、そんな私ですが、本日(金曜)は恵比寿のクラブイベントでDJをして来ました。
オールナイトのイベントで、私がDJを終えて家に着いたのはもう朝の6時。
陽がほとんど登り切った頃にマンションに着いて、5階へ上がろうとエレベーターを待っておりました。
もちろん、この時も
「エレベーター、とかいってゾンビ映画の定番だよな、ドア開いたら中からゾンビが襲って来て……ふええええぇえ、考えただけで恐ろしや〜」
などと考えていたその時!

エレベーターが1階に到着しドアが開いたら!

なんか男の人が倒れてる!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

と叫んでしまうところでした。
「人が倒れている=なにか事件だ!」
と思ったことによる叫びではなく、
「ゾ、ゾ、ゾンビーっ!」
という叫びであった。

素でビクッ!と後ずさった私。
「何? 何? これは何?」
慌てるな、という方が無理な状況です。
しかしゾンビは一向に動こうとしない。はて、なんぞこれ?

落ち着きを取り戻すまでに数秒はかかりましたが、よく見るとそれはゾンビではないようです。
壁にもたれるようにして座り込んでうつむいている状態。
……ヘルメット、ジャージ、なんかバッグみたいなのを身に付けている彼は、新聞配達員だったのです。

「ゾンビじゃなかった良かった…」
となると、今度は別の不安が。
「病気か何かで気を失ったのか!?」
あわや119番へ連絡かとアイホンを取り出したその刹那!

「グー グー」

……寝てる!!!!

ズーズーと音をたてる鼻孔、
ぷく〜と膨らんではスゥ〜とへっこむことを繰り返すお腹。
なんということでしょう、「真・寝落ち」とでもいいますか、彼は朝の新聞配達中にエレベーターの中で膝から崩れ落ちるかの様にネムネム王国へ飛び立ってしまったのです。

「どうかゾンビが襲って来ませんように!」
と願っているにも関らず、
エレベーターのドアが開こうとした時、
床に投げ出された足=どうみてもおかしい姿勢の足が見えた瞬間の私の恐怖心たるや筆舌に尽くし難いのですが、
事態が飲み込めたら飲み込めたで、この右も左もわかりません状態も違う意味で充分恐怖といえる。

なんだか起こすのも悪いし……
かといってこのエレベーターに乗って5階へ上がってしまっていいものだろうか。
っていうか新聞配達はどうなってしまうの?

そうやって悩んでいるうちに、女性の声で
「扉が閉まります」
ポーン

スー

そうして扉は音もたてずに閉まり、ロビーの静寂が再び戻って来た。
私はしばらくエレベーターの前に立ち尽くしていたが、
やがておもむろに踵を返し、無言で勢いよく階段を駆け上がっていった。


それでは良い週末を!