8月31日の日報

日報たぁんのぉしぃぃぃいー!
お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼致します。

日報、というより明日のことですが、私は引越しをいたします。

私は、ちょっと恥ずかしいのですが、「モノには心がある」とかよく思うタチでして、
昔も実家の車を買い替える際に、捨てる車との別れにガチで涙するという、今考えたら自分でも軽く引くようなロマン溢れる熱い男です。

家もその例外に非ず。
2年という短い期間ではあったものの、今の住み慣れたマンションを去るというのは、まるでアライグマのなんとかを森の中に残して行くくらい辛い。
色々な思い出が詰まった部屋が、今になって愛おしく思えています。

そして部屋と同じくらいメモリアルなもの、それは「通い慣れた道」です。
自宅から職場まで自転車で通った日々。春夏秋冬駆け抜けた風景を思い出すと、これまた一緒に昔のメモリーも脳裏をよぎります。
そういえば、3.11の日も、車と歩行者でいっぱいに埋まった目黒通りを自転車ですり抜けて帰ったものです。

今回の引越しも、新しい職場に変わったが故に自転車で通うためのものです。
(そうまでして自転車通勤にこだわっています)

新しい職場に移ったのは7月ですから、2ヶ月間は今の自宅から自転車で通ったことになります。
じつに25分かかる……と書けば普通に聞こえますが、ギアを一番軽くしないと登れないキッツい坂が2回も登場する道のりは、毎日走るには若干非現実的です。
想像してご覧なさい、毎朝炎天下でキッツい坂を登って下って、職場に付く頃にはソフトクリームみたいになっている私の酷な姿を。
そんな坂でさえ、今朝は「今日で最後なのか〜」としみじみしながら漕いだのです。

いや……この通勤路の本当の地獄は坂ではなかった。
真の地獄、それは「焼肉の香り」であった。

中目黒の山下通りをシャーと走るわけですが、あの辺りは何故か焼肉店が多い。
そうなると必然的に焼肉の匂いの中を駆け抜けることになるわけで、それ即ち「お腹がグー」は避けられぬ運命(さだめ)。
先日も日報に書きましたが、私はこの春から『晩ご飯はサラダダイエット』を実施しており、実際に結果も出ていることからストイックにそのダイエットを続けていますが、だからこそ地獄なのです。
だって、焼肉の匂いが鼻孔を突く度に
「ちくしょう、家に帰ってもサラダしかない……」
と、まったく身に覚えのない絶望を毎晩味わわせられるのですから。
強靭な精神力を誇る私でさえ、コンビニに立ち寄って肉の入ったお弁当を買って帰りそうになること多数。
なんとか思い留まれたとはいえ、これが世の凡人どもなら焼肉の匂いに耐えきれず、サラダダイエットを簡単に諦めてしまうでしょう。

然るのち完全焼肉モードになって帰宅してから食べることになるサラダを、それでは一体どうやって楽しめばいいのか?
もはや残された手段はただひとつ、
そう自己暗示しかない。

トマトを口にするごとに「トマトうめぇ」、
レタスを口にするごとに「レタスやべぇ」、
アスパラを齧るごとに「これぞ北欧の歯ごたえ」、
キュウリを食べれば「大地のカルビことキュウリ」

マッシュポテトを「肉汁のついたご飯の代わり」と懸命に思い込むことによって
「サラダ、それは地球が育んだ未来の焼肉」
という宇宙スケールの思想へ到達し、中目黒界隈で肉をついばむ連中を愚かな脂肪摂取民と見下せるレベルにまで成長することができた。
誰もが羨むこの自己洗脳スキルの体得に成功できたのは、何を隠そう今の住まいのおかげです。

ありがとう、今の家。
リノベしたばかりだったから、綺麗なお風呂が好きだった。追い炊きもできたし。
それに、東京嫌いの私でも「悪くないかな」と思えるくらい町の雰囲気も好きでした。
うーん、ますます名残惜しいな〜
……と思うのは、それはやはり明日去るから故のいっときの感情でしょうか。

とにもかくにも、今宵はブルームーンが照らす部屋の窓辺で、そっと記憶の縁を指でなぞりながら最後の夜にふさわしい静謐な時間を送ろう

と思ったのですが、そういえば今夜は朝までスタジオで練習だった。
なんじゃ!!

それでは来週も宜しくお願い致します。