11月19日の日報 暮れなずむ冬のスタバ物語 の巻

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

今日の日報というより昨日のことではありますが、
昨日は陽が落ちた辺りの時間に、私はひとりで某所スタバにてMacBookを開き、難解なJavaScriptと対峙しておりました。

とはいえ、決してストレスフルな気分ではありません。
日曜の夜というのは、来る月曜日=また仕事が始まるという意味からネガティヴな時間帯として捉えられがちですが、
私はむしろあの独特の「気の抜けまくった」雰囲気が好きでして、とりわけ、適度に空いたカフェで温かいコーヒーと共に過ごせるならば、例えそれが「(」と「{」に象られたJavaScriptという名の迷宮から抜け出せなくなったとしても、
「あ〜ほっこり☆」
と楽しめてしまうのです。

かくして、私はしかめっ面をするわけでもなく、
どこか鼻歌気分で、ああでもないこうでもないとコーディングをいじっておりました。

すると、隣の席に、この店内においてはちょっぴり浮きそうなギャルとギャル男のカップルが座ってきました。
MacBookのモニタを見つめるフリをしながら隣をちらちらと伺うに、
ギャルの方は、普通にかわいい。
なんか、桜井えりすちゃんがギャルになった感じ。
対して、ギャル男の方は、
なんか



こんな髪型してる。
マジで。

「これだけ可愛いギャルだから、さぞ周りの男に言い寄られるだろう。だが彼女が求めていたのは、薄っぺらい甘い言葉や見え透いた口説き文句ではなかった。
うっかりライオネル・リッチー…しかも"ALL NIGHT LONG"時の髪型を模してしまうちょっとドジっこプリティーな彼に、恐らく彼女の強い母性が働いたに違いない、いやそれしか考えられない」
FBI捜査官も真っ青なプロファイリングを脳内で構築していた矢先、しかし私は「ぎょぎょぎょ!(魚)」と目を丸くしました。

なんと2人はカバンの中からノートブックを取り出したのです。
これは完全に私の偏見なので彼らには失礼な物言いになってしまうかもしれませんが、しかし実際に
「ギャル&ギャル男がノートブック!(…使えるの?)」
と、その意外な組み合わせに狼狽せざるを得なかった。
多分Dynabookだった気がしますが、結構ちゃんとしたノートブックを、しかもマウスまでつけて机の上に置いちゃうのです。
一体なにを始めるというのか?
ネットゲームとかやりだすのか?

そして次の瞬間!!!!!!

カノジョに「机が狭いから」と促され、
速攻でノートPCをしまう彼氏!
出して! しまった! だけ!
IN&OUT ONLY!!

後で気付いたのですが、
このカップルは主導権を100%カノジョが握っているようで、
ライオネル君は従順な犬のようにカノジョの言うことをホイホイきいておりました。
きっとベタ惚れなんだろう。
すると、
カノジョはなんだか「あれ〜?」と言いながら執拗に画面を睨んでいます。
そして一言、
「スタバのネットが繋がらない〜」

…(そんなにムズかしかったっけ?)
一昨年まで『Wi-Fi』と書いて「ウィッフィー」と呼んでいたような私でさえ、楽にセッティングできたスタバのWi-Fi
しかしカノジョは眉間に皺を寄せながら「あれ〜」とマウスをカチカチしています。
結局、友達に電話でやり方を請うことでなんとか接続できたようですが、その間、私の耳はダンボのそれ並に大きくなり、彼らの様子を20cm先からチェキラ!しておりました。

まぁオチのある話ではない。
その後の彼らは無事つながったネットで、海外旅行の行き先やホテル、現地での予定を決めておりました。
(ほとんどカノジョが一方的に決めていた)
画面を一緒に覗き込みながらあれこれ話すふたりにとって、微笑ましい日曜の夜だったわけです。
いいじゃないか!
ライオネル!
その髪型やめるなよ!


彼らにすっかり集中力を奪われた私は、ふたりがテーブルを去ってからやっと本来の自分の作業に戻れた……

と思ったら、
今度はキャピキャピ女子二人組がやって来たではありませんか。
これがまた「キャピキャピ」と言わずになんとする、という程にキャピキャピで、片方がリクルートスーツを着ていることから恐らく大学生でしょう。
ま、もう片方はゴスロリなんですけども。

箸が転がっても可笑しい年頃なのか、なかなかなハイテンションで終始盛り上がりまくり。
話す内容は「誰々かっこいい」「ダイエットしなきゃ〜」など、とりとめのない事ばかりとはいえ、楽し過ぎる彼女たちのATフィールドに気圧されて私のタイピングもどうしても鈍る。

ふたりはカウンターで飲み物を受け取るために一度席を立ったのですが、戻って来た時にはそれぞれ大きなトレイを手にしており、その上には白い皿に鎮座する見るからにスウィーツなスウィーツの姿が。

「まぁ、若いおにゃのこだし、甘いの好きだもんね。この時間帯に食べたくなっちゃうよね」
案の定、ふたりは席に着くなりドリンクより先にスウィーツを食べ始めたのですが、ここでも「おいし〜☆」の応酬。

就活生「おいし〜☆」
ゴスロリ「ん〜! >_<」
就活生「美味しくない〜?」
ゴスロリ「もうチョー甘くて最高〜♪」
就活生「◯◯ちゃんは何買ったの?」
ゴスロリ「うんとね、なんとかかんとか〜(名前忘れた)」
就活生「へ〜、それって何味?」





ゴスロリ「うんとね、

しあわせ味


私「(ごくり…!)」


この娘がさらりと口にしたひとことは、もはや反物質レベルである。
『しあわせ味』! めっちゃ伝わるやんけ!
私は目に見えぬキュンキュン衝撃波をもろに喰らい(無理もない、たった20cmの距離なのだから)一瞬意識を失ったのでしょう。
次に気付いた時、私のMacBookの画面には、
$(document).ready(function() {
$(お菓子ッ子).しあわせ味(function() {
var x = $(this).もう我慢できない ();
$('#超新星爆発').css('妹ほしい');
});
});
…の魔コードが。

危ない、もう少しで禁断のScript実装によって次元を歪め、本来いるはずのない妹が誕生してしまうところであった。

正気をとり戻した私は、
カフェにたゆたう気怠い空気を思いきり吸い込むことで気分を落ち着かせてから、このうら若き乙女たちが送る幸せな日曜の夜にそっと想いを馳せ、
「素晴らしきかな、我が日曜日」
と微笑んだのであった。


そして微笑んだとほぼ同時に、MacBookの電池がプツリと切れた。

凝固した笑みとともに数秒間、真っ暗な画面を見つめた私は、
その笑みを保ったまま単なる金属板と化したノートPCをおもむろにバッグに仕舞い込み、冷えたドリップコーヒーを無理に喉に流し込むと、静かに、しかし足早に店をあとにしたのでありました。

重たい扉を開けて外へ出ると、この秋一番の冷え込みだったと後で知ることになるその冷気が頬から首元へかけて容赦なく吹きつける。
肩を強ばらせながら両手を上着のポケットに入れて歩き出すと、店を出たところに気の早いデパートのクリスマスツリーが飾られていることを知りました。
「だけどこの寒さが温かい日曜の夜を彩るのだとすれば、それも悪くない」
ライオネルが、ゴスロリが、そして私が得ることのできた穏やかで満ち足りたこの夜。
そう、こんな夜が、世界のみんなにも訪れますように……


Merry X'mas.

それでは明日も宜しくお願い致します。

11月20日の日報 こんなお家に住めたなら の巻

お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。

衣食住。聞き慣れた言葉ですね。
私はどちらかといえば、衣も食も人並に気にかける性格ですが、
住に関してはまったくの無頓着でした。

今までいくつかの住まいを移って来ましたが、どれも「ボロボロでなければいいや」という感じで、たいしたこだわりもないまま物件を選んでおりました。
めちゃくちゃ汚かったり、あまりに高額な部屋はさすがにアレですが、そんなに広くなくてもいいし、ユニットバスでも気にならない。デザイナー物件なんぞ全く食指が動かないわけです。

ところが、ここ最近やたらと「住まい」について私のアンテナが反応するのです。
ブログの記事、雑誌の特集、街の景色など。
そうなる心当たりがないので不思議なのですが、とにかく気付けば「家」についてあれこれ知りたがっている自分がいます。

「これが三十路の余裕というやつか」
そう勝手に思い込んでダンディズムに浸っているわけですが、いやはや、家といっても実に様々なスタイルがあるものですから、見ていて飽きません。

古い家のリノベーションもいいし、
オリジナリティ溢れるデザインも素敵。
景色など周辺環境をうまく利用したアイデアで「うまい!」と唸らせられる家だってありました。

そんな中で、こんな家を見つけました。

http://greenz.jp/2012/11/12/kofunaki_house/

滋賀県にある「小舟木の家」と名付けられたこの家は、

住まいを完全に内と外に区切って考えるのではなく、もっと内と外が緩やかにつながり、常に森を感じられる空間を造りだすことで、自然を感じ、四季を楽しむ

というコンセプトに基づいて作られたデザイン。

なるほど、とても開放感溢れるデザイン。
「吹き抜けがある」
「あまり壁で区切らない」
「家族の気配を常に感じられる」
こういった住まいの本質を突くようなスタイル、いいな〜、とうっとりしてしまいます。
「いつか東京から離れて、こんなお家に住めたなら!」

……

しかし、次にフと不安がよぎるのです。
果たして、この家に私は住めるのだろうか? と。

私は、兼ねてから自分の家を建てる際は、必ず自分の書斎を作りたいと考えています。
つまり『自分専用の部屋』です。

書斎と書けば本がズラッと並ぶイメージですが、確かに本もいっぱい置くでしょうが、この小部屋の真の目的は「誰にも害されない、自分だけの時間を確保する」なのです。
それこそ、家族ですら立ち入り禁止である。

ひとりっこ故の性格なのか、私にとって四六時中誰かと空間を共有することはきっと苦痛でしょう。引きこもるわけではないにしても、
「なんだか一人で、暗がりの隅でもそもそやっている」
昨日の日報に書いた『日曜日の晩』と同じような安堵を、私はそこに感じるのです。

こうなると、上述で紹介したような家のコンセプトの対極をいってしまうわけで、自分でも非常に心苦しい。
それに、家族にしたってあまりいい思いをしないであろうことは自明の理です。

しかし!
それでも私は書斎が欲しい!

私しか持たない鍵を取り付けて、何人も入ることの許されないエデンが欲しい!

そして、いつか息子が生まれたら、子が3歳になる頃に
「ちょっとエジプトに行ってくる」と言い残したまま、消息不明になるのだ!

謎の失踪を遂げた父親!
そして、誰にも開けることが出来ない父の書斎!

しかし、息子の誕生日には必ず父から絵葉書が届くのだ!
消印は毎年違う国、世界のあちらこちらから!

なにか知っているのか、と問い詰めても顔を伏せて黙り込む母親!

そして!
息子が16歳になった日!
絵葉書ではなく、ボロボロの小包がグアテマラから届く!
その小包の中にはただ1つ、鍵が入っているのみ!

ピンときた息子は、さっそくその鍵を使って父の書斎へ入る! すると!
壁一面を埋めるおびただしい数の書籍!
そして、反対の壁に貼られた大きな世界地図! 地図には新聞の切り抜きや謎めいたメモがピンでたくさん留められている!

埃が舞う暗い部屋に差し込む陽光が、ちょうど本棚のある一冊を照らしている!
背文字には『キラキラHair』の文字!

古文書や学術書しかない書棚において唯一、bitchな雰囲気を醸し出しているこの雑誌を不思議に思った息子が、『キラキラhair』を取り出そうと背表紙を引き抜くと!

ガコン!

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………


以下省略。


なので私は、秘密の書斎が何としてでも必要なのです。
もちろん、海外を飛び回るフリをして私は東京のコワーキングスペースを転々としながら普通に仕事を続ける日々。
世界地図にピン留めした行き先のヒントも、全てブービートラップです。しめしめ。
どうだい、男のロマンだと思わないかね?
しかし
「失うものが大き過ぎる、やめておけ」
そんな声が聞こえて来そうです。

だが、私は欲張りである。
夢は叶えるためにあるのだ!(牧瀬里穂

ドリ!(カム!)
ドリ!(カム!)

そこで私が提案するのは
「オーガニックで開放感溢れる素敵な家」と、
ハリーポッター 暗黒の扉」、
この2つの要素を併せ持ったアイデアである。


こんな感じ。
開放感たっぷり空間に潜むミステリアスな影…
我ながらエキゾチックなアイデアである。
これからの住まいに必要なのは、家族との絆や癒しの時間ではない、エキゾチックなのだと、今、心で理解しました。

それでは明日も宜しくお願い致します。