9月25日(金) 肉を詰める余裕
お疲れ様です。伊藤です。
本日はこれにて失礼いたします。
遅くに帰宅すると、妻が「椎茸の肉詰め」を作っていたので、もそもそと食していましたが、途中でふと思い当たることがありました。
「椎茸、肉詰めるほどスペースなくね?」
ピーマンの肉詰めは理解に事足ります。なぜならピーマンには空間があるからである。
この場合、空間と書いて余裕と読む。
余裕しゃくしゃくのピーマンさんに肉を詰めたらどうなるだろう? そんな空想浪漫に想いを馳せるのは紳士淑女の嗜みと言っても過言ではない。
しかし翻って椎茸はどうか?
あの裏側のすこしくぼんだ部分、あれどう見ても肉詰められないでしょ。
人間とは増長する悲しい生き物なので、史上初にピーマンに肉を詰めた連中が、「うんめーwwww」と味を占めたのかもしれない。
「もっと肉詰めようぜwww」
そこで手に取ったのが椎茸だったのかもしれない。
偶然でないならば、ピーマン+お肉のハーモニーに匹敵する存在として、椎茸の味わいを思い立ったのだろうか。
だがどちらにせよ、肉を詰めてる最中に誰だって気付くものだと思う。
「ダメだ、椎茸さん、空間(余裕)ないわ」と。
ところが、この椎茸の肉詰めはいまやポピュラーなメニューとなり、ママさんたちがドーンと家庭の食卓に並べる習慣が成立してしまっている。
おかしい。
どう見たって椎茸に肉は「詰まって」いない。乗ってるだけである。
事実、あなた、椎茸の肉詰めをほおばる時、まぁまぁ大きいからまずは半分だけ齧りますよね。
ところがハンバーグ部分の柔らかさに対して椎茸はまぁまぁしつこい硬さがあるので、半分だけハンバーグを齧ろうとしても、必ず椎茸は全部分がついて来てしまう。
ペロリ、その後あなたの箸が掴んでいるものは、ただのハンバーグである。
これこそが「詰まっていない」ことのなによりの物的証拠である。
しっかり詰まっていれば、椎茸が多少噛み切りづらくとも、ちゃんとハンバーグ部分と一緒に半分が手元に残るはずなのだから。ピーマンがそうであるように。
椎茸に肉は詰められない。
だのに、我々人類は「椎茸の肉詰め」というメニューを堂々とうそぶく。
明らかにおかしい。
し、そのおかしさに周囲の誰もが気付いていないように思える。
ひょっとしたら……
「椎茸に洗脳されてる?」
我々が目の当たりにしている日常の風景、これはもしかすると、椎茸が我ら人類に見せている幻想であり、脳神経を侵されているのかもしれない。
「はじめて人類が椎茸を口にした日から、我々はずっと椎茸の支配下にあるのだとしたら?」
まさに映画『マトリックス』の主人公・ネオの気分そのもの。
真実に気付いてしまった私を不穏分子とみなした椎茸が、黒服のエージェントを送り込んでくるかもしれない。ヤバい、死ぬ。
「椎茸さん、余裕ないとか言ってマジすんませんでした」
深夜、我が家の食卓上で、箸で掴んだ椎茸の肉詰めをじっと見つめる私。
を、ちらっと見やる向かいのマンションの廊下を歩いているおばさん。
と、目が合った。
というお話。
それではよい週末をお過ごしください。
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